インプロセスモニタ・コントローラ


プラズマ発光の分光分析を利用したインプロセスモニタは、スパッタリング装置の条件を管理する上で有用な手段となり得ます。

原子の密度または電子温度の相対的評価

 プラズマ中に存在する特定の原子(または分子)から放出される発光の強度は、この原子が存在する密度とこの原子を励起させる電子の密度とエネルギに依存します。 従って、電子の状態が一定とみなせる測定からは原子の密度をモニタできます。一方、原子の密度が一定とみなせる測定からは電子密度または電子温度をモニタすることができます。注目する原子(分子)としては、スパッタ原子、スパッタガス(多くの場合Ar)、反応ガス、残留ガス等が対象となり得ます。


反応性スパッタリングの特徴

 不活性ガスによるスパッタリングは非常に安定した現象であるため、通常はモニタリングを必要としませんが、不活性ガス+反応ガスによる金属ターゲットの反応性スパッタリングでは事情が一変します。 通常のスパッタリングの制御と同様に、放電の強度(例えば放電電力)とガス流量を制御すると、スパッタ原子の発光強度と反応ガス流量の関係は、下図において黒色の曲線、緑色の曲線、及び矢印からなるヒステリシス曲線となります。 発光強度は不連続に変化し、ヒステリシスループ内には安定な状態が存在しないかの如く観察されます。 成膜速度の反応ガス流量に対する特性は、発光強度のそれと類似したパターンとなります。


インプロセスモニタ・コントローラの効果

 インプロセスモニタ・コントローラを用いると、上述のヒステリシスループの内部に安定な放電状態を実現することができます。これを下図の赤色の曲線にて示します。 この曲線上では成膜速度と膜組成が連続的に変化するため、所望の組成の膜を、多くの場合に高速で得ることが可能となります。